良い物は良い物なのだ

周りの人がイマイチと思っても、自分が良いと思ったモノやコトをブログしようかと思ってます。連載は不定期です。

楳図かずお「漂流教室」感想

イメージ 1
 
簡単な物語の説明
平和な日常を送っていた小学6年生「高松翔」。彼が小学校へ登校したある日・・・・突然に衝撃音が鳴り響いたと思うと、小学校の敷地全体が未来の地球へとタイムスリップしてしまう。
未来の地球は荒廃した砂漠となり、文明も人間も、草木さえ存在しない。
先生達「大人」はその現実を受け入れられず発狂の末次々と死んでいき、残された数百人の子供達で事態の解決をみようとする・・・・・
という物語です。
小学生達で「どうしよう」となるのですが、食料や水の問題、異形の生物の襲来、極限状態から起こる疑心暗鬼から派閥闘争・・・・そして小学生同士の凄惨な殺し合いもあります・・・・(´Д`;)

これ・・・・・少年誌で連載してたんだよね・・・・^^; 今では絶対に無理でしょう。
楳図作品はまず「絵が嫌い・気持ち悪い」と毛嫌いされることが多いです。
「好き・嫌い」の好みがハッキリと別れる漫画家ですな。
古典漫画にカテゴライズされてもおかしくないので、昭和40年代の言葉遣いや、服装も違和感を感じる人もいるでしょうし、キャラクターの動き方がカクカクしているような楳図先生独特のコマ割りなども慣れない人にはアレルギー反応を示すのかもしれません。
「今読んでも色褪せない面白さがある」と感じています。
とにかく「作品の持つパワー・熱」が全然色褪せてないように感じます。
まぁ、楳図ファンではあるので好意的に捕らえてしまうのですが・・・
 
大人になっても「得体の知れない恐怖感」を感じました。
それは「見た目のビジュアルからくる恐怖」ではなく「心理描写を想像した時に理解できる恐怖」なんだよなぁ
子供の頃に読んでいたら・・・・絶対トラウマもの(T.T)
 
テーマは「平和な日常の有り難さ」「地球環境」「親子の愛・絆」「許す気持ち」
 
 
「平和な日常の有り難さ」
SFとして「突然学校全体が荒廃した未来へタイムスリップする」という事なのですが、我々の生活する「現実世界」でも「平和な日常」が「突然消える」こともある。
「大地震などの自然災害発生」「自動車事故にあう、飛行機が墜落するなどの人的事故」「心臓発作や脳卒中・・・突発的でなくても重病の発生を告知される」・・・などが大きな要因として考えられますが、その他に「自転車事故の加害者となる」とか、「痴漢えん罪の疑いをかけられる」「会社倒産やリストラ」だって・・・・平和な状態ではなくなるんですよね。
人生いつでも「良いことばかりの右肩上がり」とは限りません。
「家族が健康で生活出来ている」「贅沢でお金はかかっていなくても、毎日食事を食べる事ができて、ひもじい思いをしない」「大変なことが多くても、給料をもらえる仕事がある」等々・・・・・普段は深く考えることが少ない「当たり前の平和・幸せ」を有り難く感謝する気持ちを認識させられました。
 
 
「地球環境」
この漫画は約40年前から「地球の環境破壊・汚染」を提唱しています。
ここ数年ですよね。「エコロジー」と言われ出しているのは。
やっぱり「地球で生きている」からには他人事ではないっすよ。仮に自分たちが生きている間に大丈夫でも、子供・・・孫の子孫が過酷な環境で生きなければならない・・・・そんな苦労は出来る限り背負わせたくないと個人的には思います。
 

「親子の愛・絆」
母親の愛情を表現方法が凄かったですね・・・・一般的なバランス感覚で判断するならば、周りが制止する意見を聞かず「息子のピンチを助ける!!」と行動する母は、「変人・奇人」なんだよね・・・・客観的に「ちゃんと時空を越えて息子と会話が出来ている」ことが判っているから、読者としては「当然の行動」と思えるんだけど・・・・・
主人公達が何度もピンチに陥り「親目線」として何度も彼らのピンチを救いたいと思えど、ただの一介の読者なので何も手助けしてあげられないもどかしさ・・・・親の立場になったから「そういう気持ち」になるのだと思います。
 
 
「許す気持ち」
物語が進むにつれ「サバイバル状態」となり、一人・・・また一人と死亡者が増えていきます。
その内容も「外敵」の襲来を受けるパターンもありますが、「恨み・裏切り・疑心暗鬼による自己保身」による内部分裂(内部抗争)での殺し合いです。
 クライマックスになると小学生なので「感情」が暴走し、歯止めが利かなくなります。規模こそ小さいけど立派な「戦争」です。
 でもラストは「全滅」ではありません。それではあまりに救いがない。
 敵対するグループの代表同士をはじめ、その他のシーンでも子供達が「過去の出来事や、罪を許そう」とするんですよね。なかなか人の感情・・・特に「恨み」というものを乗り越えることは難しいのですが、争い。。。。それが広がって戦争になった時に最後の最後で「許す気持ち」が無いと、解決出来ないと思います。
 
その他にも印象的だったのが
自分を捨て、他人の為に行動する主人公に何度もピンチを乗り越える救いの手が差し伸べられる点です。
 この作品が陰惨で非常に重く暗い気持ちに引き寄せられる中で、救われる気持ちになるようにバランスを取ってくれてるのが、主人公高松翔の「献身的に、建設的に数々のピンチをどう乗り越えていくか?」とその小さい体で受け止めようとしている姿なんだと思います。
 
 
ちょっと穿った味方をすれば・・・・イデオンエヴァに似ているんですよね。
「生き残る為に、残された人類同士でエゴをぶつけ合いながらも、正体不明な敵が襲いかかる」
エヴァキャラデザの貞本さんも影響受けているとの事です。
 
漫画でありながらエンタテイメント要素のみに囚われず、文芸小説のような深いテーマを持った「唯一無二」な名作だと思います。
 
ページを進めながら「うぉぉ~~」「凄いな・・・」と感嘆しつつ読んでいるその横で・・・・娘が横から読んでいるw
さすがにこれは・・・・トラウマになるので読ませません^^;;;;;